本研究は、戦後日本経済の高度成長について考えるとき、数々の先行研究のなかで挙げられた成長要因について分析した研究である。これらの様々な要因が戦後の日本経済の発展においてそれなりの役割を果たしたことには異論はないが、各要因が果たした役割は異なっているし、またそれが経済発展の各段階で果たした役割の程度も違うはずである。そこでこれらの要因の中でどういうものが主要なものなのか、日本経済発展においてこれらの要因が担った地位と果たした役割はどうだったのか、そしてこれらは日本経済が成長する過程でどのように変化していったか、について当時の経済指標などを通して具体的に調べる必要があると考えた。日本経済の高度成長の要因を互いの関連性などをもとに分類すると大きく6つの要因に分けられるが、本稿ではこれら要因のうち時代的経済状況を考慮して先に考えておく必要があると判断される戦後日本が置かれた特殊な歴史的条件激烈な企業競争高速度の資本蓄積の3つの要因について資料を通じて分析を加えている1)。戦後日本経済が高度成長を実現できた理由については、高度成長における総合的な働きの中での、各要因の地位と役割を明らかにする必要があり、その密接な関連性を改めて考えなければならないのである。