日本語は世界に存在する有数の言語とは異なり、一言語が四つの文字体系をもった至極に稀な言語である。すなわち日本語では漢字仮名型、カタカナ型、アルファベット型などの字種が複雑に使い分けられている。既存の研究では漢字仮名型は漢語や和語などを、カタカナ型とアルファベット型は外来語を表記すると知られているが、実際の用いられ方をみると必ずしもそうとは限らないことがわかる。そこで本論文では日本の有名百貨店に入店している店舗の商号表記にもとづいて業種別にあらわれた字種の用いられ方を探った。本論文で分けた業種はまず業種を一括した全体、食料品、婦人服、婦人雑貨、男性服雑貨、インテリア、スポーツファッション、レストランである。その結果、それぞれの業種に現われる字種の用いられ方が異なっていることが明らかになった。本論文ではこのことの裏側には日本人の字種に対する意識が働いており、その意識は「宝石箱の効果」という概念で突き止めることができると主張した。